小僧にはわかるまい

 永く生きていると楽しいことが多すぎます。もちろん、振り返るには
若く、懐かしんで時を過ごすには忙しすぎる我が身。ただ若さ礼賛は
如何なものかなぁと。

風呂の電気が壊れました。スイッチが壊れ、現在隙間に名刺を
挟んでようやくつく状態です。なにが不便かというと、脱衣所の
電気は「感知式」にしており、動きに反応してスイッチが入り、
しばらくすると切れるようになっております。浴槽につかり
しばしノンビリしていると、この名刺がズレ闇夜に。まるで
高知県の祖母宅へ向かう山陰の山道。

人口の明かりがないというのは闇という言葉の意味を教えて
くれます。

てなわけで不動産屋に電話を。
しばらくして建物管理をしているという建築屋さんから電話が。

私が出ましたが原稿を書いているときで、すぐに「専務」に
渡して状況を伝えます。今から来るというのですが、土曜日の
夕方で原稿が上がり次第、買い物に出かける予定でしたので
断ると「ご主人に代わって欲しい」といいます。

なんじゃ? 原稿を中断されると結構苛つきます。私は天才でも
物書きの訓練を積んだものではなく、情熱と愛情と集中力で
事象を脳内統合して原稿にまとめます。それはいつも真剣勝負。

でも風呂の闇は恐ろしいので仕方がありません。

電話を替わると

「あっちゃん? あっちゃん」

え? 私をそう呼ぶのは限られています。しかも声はおっさん。
最大年齢45歳ぐらいであろうオッさん。

親戚や知人のオジサン達はもう60ぐらい。その年齢の友人は
一人いますが、彼は「あっちゃん」とは呼びません。いとこは皆
年下で私の呼称は「あつしにいちゃん」。母方のいとこの中での
最年長は一学年上の私の姉で、男では私が年長。父方でも男では私が
やはり一番上。「あっちゃん」と呼ぶ年長者は女性かじいさん。

「誰じゃ、こいつ」

急速に私の醸し出した険悪なオーラを感じたのでしょう、電話の
向こうのオッさんはいいます。

「Tだよ。T、ミヤワキ」

彼の名前はT,主にファーストネームのK一朗と呼んでいる
懐かしい友人。私をからかって「あっちゃん」と。

私の住むアパート(構造上はマンション)のメンテは彼の
努める建設会社の仕事だったのです。そして出かける旨を確認
すると

「俺さぁ、月曜日休みなんだよね。水曜日でいい?」

彼の先生パンチにひるんでいる私は一も二もなくOKを。

半年前に街で見かけ、挨拶もそこそこに別れ、まとも言葉を
かわしたのは・・・もう7年前ぐらいでしょうか。こういう
縁に触れる度に永く生きる楽しさと歓びを。小僧には7年ぶりの
再会が時を越えることはまだ理解できまいとほくそ笑みます。

電話を切って呟きました。

「あいつ、三連休じゃん」

自営業者の立ち見席の物書きは明日も原稿を書いています。

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