売れない薬を置くスペースはない

 先週公開のWeb担当者フォーラムの記事で「薬事法」について
触れました。この記事では「法律は変わるので注意しましょうね」
ということと商売をするには「リーガルマインド」が不可欠だと
いうのが本旨として掘り下げませんでしたが、実に不可解なのが
この6月の薬事法改正なのです。

ざっくりと説明すると市販薬を副作用が考えられる順番で
3つに分類して販売方法を規制・・・いや指定しました。

と、いうのは立場により見方が変わるのです。
例えば記事では「ネット通販」の立場から語りましたので
こう書きました。

「上から二つを通販禁止とした」

第一類医薬品、第二類医薬品は通販禁止です。

理由としては「対面販売」を原則としようとするものですが
これについては後で触れますが、これらは消費者の利便性に
反するのではないかという声もあります。

第一類には一部の「育毛剤」があり、第二類には

「解熱鎮痛剤や風邪薬、胃腸薬、水虫薬、妊娠検査薬」

がはいります。育毛剤を語弊もある懐かしい表現にすれば

「毛生え薬」

です。いっそサザエさんちの波平さん級ともなれば、
なかば洒落も含めて気にならないかも知れませんが、微妙な
薄毛レベル、脱毛レベルの場合、購入している姿を人には
見られたくないものです。その点、通販ならば梱包された
中身は宅配業者にもわからないので安心できます。

そして水虫もあまり公表したくありませんし、妊娠検査薬
を購入する状況が必ずしも

「ちょっといいかな」
「なに?」
「病院に行かないとハッキリとは分からないんだけど・・」
「どうした、具合でも悪いのか」
「ううん。・・・家族が増えるの」
「やったぁ!」

という場合だけはなく、北の国からで裕木奈江さんが演じ
た「トロ子」が吉岡秀隆の「純」に検査薬にて妊娠反応がで
たことを

「残念な色」

と表現したようなシチエーションだってあります。
こんな時に「通販」は

「個人情報保護」

のツールとして最適です。
ところが買えなくなりました。

さらに「熊のゐ」などの「伝統薬」も通販禁止です。
伝統薬は「地域」に根ざしており、いわゆる「僻地」で
製造されているものも多く、今後、伝統薬を望む人はその
「僻地」まで足を伸ばさなければ購入できないのです。

そろそろ突っ込みが入りそうなので触れておきますが、
こうした伝統薬を継続して利用している人や、離島などに
住んでいる人は通販で購入することができます。

ただし2年だけ。
つまり2年後には買えなくなります。

換言すれば伝統薬も富山の置き薬もこの2年間で物流網
にのせろとなります。

しかし、ドラッグストアや小売店にのせるということを
生産者の側の立場に立てば生殺与奪権を奪われることであ
るのは昨年原油高で悲鳴を上げた

「イカ漁」「サンマ漁」

からも明らかです。熾烈な販売競争を繰り広げる小売り
業が伝統薬の仕入れ値を叩かない(値下げ要求)わけが
ありません。

通販ができ、そこに加えて小売りのネットワークも
選択できるのなら製造業者の「自己責任」で選択すれば
よいことですが、小売り網にのせる以外に選択肢がない
というのは「死ね」に近い決定です。

売るために小売り網にのせれば利益が減少しますし、
利益確保のために値上げすれば店頭での不利は確実で、
売れない商品を陳列している棚は小売店にはなく撤去さ
れます。

利益減少の「消耗戦」しか残されておらずはその先で
商売が「死」にます。

おまけに述べれば「富山の置き薬」もダメです。
通販できる第三類医薬品はビタミン剤などだけです。

断言すれば「悪法」です。
ところがこうした「規制」に日頃は、はしゃぎまくるマスコミ
が静かです。

「コンビニ」の立場で見ると悪法ではなくなるのです。

「薬を売れるようになった」

と。規制緩和なのです。しかも薬剤師だけでなく

「登録販売者」

がいれば水虫薬、妊娠検査薬といった第二類まで販売できる
ようになりました。スーパーマーケットもドラッグストアも
同じです。

報道機関というのは不偏不党で公明正大なものなのでしょうが
いかんせん民間企業でお金をくれるクライアントに偏ります。

「通販規制は天下の悪法だ」

というでしょうか。
スーパーマーケット&ドラッグストア&コンビニの連合軍に
加えて背景には何かと話題を振りまく「厚労省」があります。

そして施行されました。
ワイドショーは歓迎一色で報道していました。

野放しだった薬通販にも問題はあります。
しかしそれは違法ダウンロードの横行を規制するために
iTMS(iTunes Music Store)を禁止するようなものです。

通販という方法に問題があるのではなく「野放し」が
議論されなければならなかったのです。

またコンビニ薬販売解禁を説明する時に使われる

「セルフメディケーション」

からしても議論が破綻します。これは自己管理、自己責任
において市販薬を上手に活用することで健康になり、なおかつ
逼迫する医療財政の負担を軽くしようという目論見も見える
ものですが、ならばなぜ通販を禁止するのでしょうか。

自己責任の原則から「十分な説明」ということを理由に挙げ
ますが、第二類の薬に関しては「努力義務」で対面での情報提供
は絶対ではありません。そして伝統薬でも述べましたが、熾烈な
販売競争を繰り広げる小売店の棚には

「売れない薬を置くスペースはない」

のです。しかし、たまにしか売れなくても薬は本人にとって
はまさしく「死活問題」で、売れないからと撤去されれば
それこそ「死活問題」となります。

その点、ネットという仮想空間はほぼ無限です。もちろん
伝統薬から最新商品まで陳列できます。十分な説明ということで
あればこんな方法もネットなら可能です。

「説明サイトやムービーを見たあとに出題されるクイズに
正解しないと購入できない」

対面で人が説明しても話を聞いていない人もいますが、

「薬購入クイズ」

に正解しなければ買えないとすれば自己責任のための理解は
充分ではないでしょうか。

つまりセルフメディケーションを推進するのであれば、
両者は補完しあう関係で禁止することは消費者の利便性を
阻害していることになるのです。

はてさて、施行されて以後、検証する報道はありません。
この件に関しては私は次の言葉で締めくくります。

「頑張れ、三木谷さん!」

楽天市場の三木谷さんは声高に異議を唱えています。
もっとも彼は利害の上でしょうが、この件に関しては彼の利害と
私たちの利害は合致しています。

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