決まったことを認めない国民

先週、原発の再稼働を都民の住民投票で可否を問うという直接請
求があり、その決議が都議会で行われました。

「みんなで決めよう『原発』国民投票」という「市民団体」が署名
を集めたものです。

この団体のホームページを見ると原発について賛成も反対もひっ
くるめて、原発の是非は国民が決めるということだそうです。調べ
れば結構、偏っている気もするのですが、それは今回の本題ではな
いので割愛します。

そして議会は否決しました。当日の模様は東京MXテレビの報道
でみました。報道番組とはいえ、一部を切り取るもので、そこに
作為があることは珍しくありませんが、否決が決まり傍聴席で
大声を張り上げる人がいました。言葉のひとつひとつは聞き取れま
せんが、どうやら否決に不満のようです。

この団体の関係者であろうとは報道からの推測に過ぎませんが、
だとしたらおかしな話しです。「みんなで決めよう」といいながら
みんなの代表である都議が諮って否決したのなら、それを粛々と
受け入れるのもまた「みんなで決める」の結論です。

結論に不服をもつのも思想信条の自由で、つぎにまた政治的
活動をすることを止めるものではありません。しかし、傍聴席から
がなり立てるのは大人の所作ではありません。

そもそも直接請求とは、読んで字の如しで請求はできますが
それは結論ではありません。今回は原発賛否の住民投票の条例
制定を求めるものであり、請求を受けた首長が議会を招集して
その議会が「いらない」と結論をだせばそこで終わりとなるのが
この一幕です。

繰り返しになりますが、その後のことはその後として。

しかし、先に指摘したようにルールに則り、署名を集め首長に
求め議会を開いたその結果が不満でがなり立てる行動の意味する
ところは

「とにかく俺の意見だけを聞け」

と見えても仕方がないでしょう。

これに先立ち、同じく報道からですが、都庁のロビーで
首謀者か代表者かわかりませんが、30代後半の男性がインタ
ビューを受けていました。

彼は、いままでこうした活動をしたことがなく、昨年の原発
事故を受けてのことだと。そして言います。

「政治を知らなかった(聞き覚えの要約)」

興味がなかったというニュアンスをわたしは感じました。

すこしだけ人生の先輩としていいます。

「40近いオッさんが知らない世界にしゃしゃり出るのは
恥ずかしい行為」

これが20代ならその行動力に眼を細めるかも知れません。

しかし、まもなく40才なら、知らないことを恥じるべきです。
学ぶに遅いとは言いません。しかし、知らないことを知らないまま
行動に移るのは、とても恥ずかしいこと・・と、わたしの美学
は叫びます。

こういう反論もあるでしょう。

「いま、なにかやらなければならない」

行動力のある馬鹿が現場を混乱させることは菅直人が証明し
てくれたことです。忘れたのでしょうか。それともそれすら
見ていないのでしょうか。

ちなみに住民投票には50億円かかると、ある都議がいって
いました。

原発は命の問題なんだ。お金じゃない。

しかし、お金もまた命の問題です。死ぬほど食べられなかった
経験をしたことがない夢想家だけが銭金を棚上げすることができ
ます。あとお金に絡んで生き死に直面していないと分からないで
しょうね。

というわけで、わたしはお金も命の問題、経済も増税も命の
問題と考え、原発だけを特別視する立場には立てません。

話を戻します。そうはいっても、一度くらい住民投票しても
良いのではないかという主張に唾を吐くのは、一度くらいは
とやらせた民主党政権の体たらくによります。

そしてなにより住民投票とは素人の判断に委ねるということ
です。原発という経済から安全保障に関わる問題を、先の
アラフォーのオッさんのように素人を恥ずかしいと思わない
住民が判断する、いやさせようという発想が論外です。

と、結論に移る前に「素人」について。アラフォーの男性に
ついてこういう声もあるでしょう。

「知らなくても良いのだよ。いま、気がついたのだから」

これ、脱原発の活動家やプロ市民がよく使いますが、ほかに
これを語るのは新興宗教ぐらいです。いま、教え目覚めました。
救われますと、ね。

素人の判断が正しいとするなら何も決まらなくなります。

一度、住民投票が行われれば、原発の再稼働だけで終わる
ことはないでしょう。味をしめた素人は何度も自分の声を
届けようと・・・正しくは、自分の意見に従わせようとすべて
に噛みついてきます。なぜなら、自分の意見を主張しても
その後の事務処理他の実務について、こうした素人は関与
しないからです。平たく言えば

「言うだけ番長」

か、

「評論家」

ですから。そもそも素人の実務は負えませんし。

原発の次は安保でしょうか、海兵隊、TPP、消費税に
年金、歴史認識、なんでもありです。

すると

「次に何を決めるかのための住民投票」

となります。

デモや政治活動を否定するものではありません。住民投票を
求めること自体も同じくです。しかし、その場で「素人」を
掲げそれを恥ずかしいと誰も教えてあげない、あるいは認識す
らないことこそ、日本の病巣なのです。

昨日、ようやく衆院で可決された増税ですが、これは自民党
政権時代から繰り返されてきた言葉で

「決められない政治」

というものがあります。

しかし、造反 小沢一郎と先の都議会傍聴席を重ねたときに

「決まったことを認めない国民」

もそこにあると発見します。

認められないのは「素人=無知」だからです。

小沢一郎氏など「三権分立」すら分かっていませんでしたか
らね(記者会見で小沢に逆質問された記者が「あんた馬鹿か」と
言い返せなかったのはさらに阿呆ですが)。

素人だから決まったことの意味が分かりません。

素人だから知らなくて当然で、素人だからもう一度ぐらい
チャンスがあるはずで、素人だから・・ねぇ、相手しなさいよ。
素人の俺の、わたしの話を聞きなさいよ。

素人を自認するなら、プロのいっていることが理解できるよう
になるまで勉強しましょうね。

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