藤本由香里における近親相姦の正当性

 表現の自由を信奉するもの、我が国においては大半が卑怯者です。都合の良い前提で、自説を開陳し、別意見に理解を示す振りをして、やっぱり結論をねじ曲げます。

 藤本由香里 明治大学国際日本学部教授。彼女は漫画の規制にとかく反対し、かならずこの手の話題に絡みついてくるのですが、上野千鶴子に支持しているのならさもありなんですが、産経新聞が「MANGAの時間」と称して、彼女に寄稿させているのは、懐の深さではなく、かの新聞の内部には左系のシンパが多数いるからです。

 良家の子女は、置かれた特権階級を棚に上げ、社会正義を求めようとするので、その理想が左翼にシンパシーを覚える理由で、縁故入社を散見するフジサンケイグループの病巣でもあります。

 それはさておき、昨日(2014年5月28日)の産経新聞「MANGAの時間」にて、「美味しんぼの鼻血ブー事件」を取り上げています。まぁ、凡庸に過ぎる論をこねくり回したのは、「美味しんぼの鼻血ブー事件」はマクラに過ぎず、論旨は「漫画規制反対」にあるからです。

 東京都青少年健全育成条例の新基準適用第1号がでました。ドワンゴとの経営統合が発表されたKADOKAWAの「妹ぱらだいす!2~お兄ちゃんと5人の妹のも~っと!エッチしまくりな毎日~」です。

 中身はタイトルの通り。近親相姦を礼賛する内容です。なぜならもともと「エロゲー」で、そのコミカライズだから当然です。

 ここで藤本由香里の産経新聞における主張を引用します。

≪性描写これまでの成人指定の基準以下だ。しかし、同居する5人の異母妹と次々とHするという設定が新基準の「近親相姦を不当に賛美」したものとして、不健全図書の指定を受けた。≫

 と、状況説明しつつ、議論を誘導しようと工作します。Hと一文字で記しますが、AVでいえばカラミです。実の妹とセックス三昧というほうが正しい表現でしょう。続きます。

≪議員のブログなどでは、エロ本であることをもって、規制は当然とする意見も見受けられる。が、「性描写の程度」ではなく、「モラルに反する描写」を判断基準にするならば、より慎重な姿勢が求められよう。何をもって、「不当に賛美」と判断したのか、そこをはっきりさせることが、今後の運用のためにも必要なことに思える≫

 と、藤本由香里の人間性というか価値観が透けて見え、よく産経新聞が使うなぁと嘆くのですが、既に無料版しかよんでいないの文句をいうのは筋違いなのでしょう。

 まず「議員のブログ」とあります。都の条例から都議会議員とは推察できますが、誰でしょうか? 実名を挙げないのは武士の情けでしょうか。しかし、ロリコンに関しては左右を問わず共同歩調を取るネットをみるかぎり、「妹ぱらだいす」に同情する声は少数派です。

 なぜなら、規制とは「ゾーニング」で、それはエロ漫画と、一般漫画の陳列棚を区別しましょうというもので、販売はもとより出版を規制する条例ではないからです。成人漫画と明示し、販売場所をわければエロの嗜好、表現の自由を束縛したりはしません。

 むしろ、上場企業のKADOKAWAのコンプライアンスが疑われる事例。もっともKADOKAWAは「電撃シリーズ」のように、エロのグレーゾーンの限りなくピンクに近い領域を疾走しているので確信犯で、ネットユーザーにもそう見る声が多数ありましたが、藤本由香里はこれに触れません。

 そして「不当に賛美」について問題のようにあげつらいますが、異母妹とはいえ

「妹との性交渉。なおかつ多数の妹の性交渉」

 を陽気に描く(例えば謎の組織に脅迫されて、セックスしなければ妹が死ぬ、いや地球が崩壊するといったシチエ-ションではないという意味)本作を「賛美」ではないとはなんくせもいいところです。

 近親相姦は古今東西あったシチュエーションですが、かつては「血縁の有無」、互いの存在の「未確認」、あるいは「死を覚悟する葛藤の末」という縛りがありました。本作には欠如しています。しかもゾーニングを守れば販売して良いのです。出版して良いのです。

 さらに藤本由香里が卑怯の末か、無知蒙昧なのか、いや、単純に活動家で、アジテーションのための議論誘導に過ぎませんが、判断基準をはっきりさせろというのは詭弁です。

 ブータンと中国の国境線は、毎年のように中国が軍を使い、境界線をブータン側に押し込んでいるといいます。漫画も同じです。ある種の「限界線」がひかれると、それをわずかに触れながら、押し込むことで「エロ」を拡大してきた経緯があります。

 遊人の「エンジェル」がエロ過ぎて社会問題になった反省・・・というか、あれを出したのも「美味しんぼの鼻血ブー事件」の小学館。炎上商法は社是なのかも知れません。

 仮に条例の「境界線」を明示すれば、「そこには触れていない」と強弁してきた経緯を振り返ればわかることです。

 お上の「恣意的な運用」を認めているのではありません。こと、「少年」漫画に至っては規制しなければ野放しになっており、週刊少年マガジンの新しい連載ではつき合ってもいない女性との「童貞喪失」から始まっています。これも「美味しんぼの鼻血ブー事件」のように「最後まで読め」というのなら、日活ロマンポルノだって「高い作品性」があります。こちらは本当に。でも、子供に見せられるかというのと敢然とノーといいますが。

 いちいちすべてが我田引水。最たる例がこの箇所。

≪表現は基本的に自由である。問題があれば、取り締まられるのではなく、批判に晒される。批判に反論があれば反論する。それが健全な社会であることを確認しておきたい。≫

 これは条件設定が、おかしい。「美味しんぼ」に限定すれば「青年誌」なので、批判云々は妥当です。だから批判されたのです。批判に批判して「発狂する」とまで言い切った雁屋哲は逃げ回っていますが、批判される内容を書いて批判され、批判されすぎというのは論理破綻です。しかも、藤本由香里のずるいところは、事件に対して掲載したスピリッツ編集部が、双方の立場の意見を掲載したことを了とするところ。

 自説に忠実ならば、雁屋哲、作画の花咲アキラ、担当編集者、編集長、そして小学館の社長が反論するのが第一という指摘が欠落しています。

 そもそも「表現の自由」と「子供向けのエロ」は似て非なるものです。善悪の区別も乏しい子供に大人と同等の権利を与えるという「思想」なのでしょうが。しかし、この手の権利論者の奏でるリズムに「義務」という裏拍子は聞こえてきません。

 そして表現の自由は世界的に野放しではないのは「ナチス礼賛」を筆頭に、イエスや預言者についても同じで、むしろ、もっとも表現の自由、すなわちタブーがないのが日本である事実を彼女らは語りません。

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