ベネッセから流出したのは「たかが」レベルの個人情報

 「進研ゼミ」のベネッセの個人情報が流出しました。いまや個人情報は何をおいても守らなければならない特定秘密のようです。

 本当でしょうか。そもそも「個人情報保護法」が一般社会に拡大された趣旨は、入手した個人情報の濫用に対して、個人がその削除を求めるためであり、個人情報を過剰保護するためのものではありません。

 実際は一人歩きが非道く、小中学校で「連絡網」が作られなくなり、地域中学生による陸上か何かの競技会で「匿名」を主張した選手が表れ、テレビ画面の街角は、映り込んだその場にいた人の顔にモザイク(ぼかし)をかけることが常態化しています。

 ついでにいえば

“スポンサーのライバル企業名や看板にぼかし”

 は公共の電波を使う放送局としてはやり過ぎでしょう。街角の情報とは「広告」もコミだからです。看板や自動販売機にまでぼかしを掛けては、どこの街だか分からなくなります。

 街角はパブリックな空間です。そこにあるすべてが公的な情報です。政府機関などの主体性が存在する「公」という意味ではなく、誰もが接続可能な状態にある情報だということです。

 そしてテレビやラジオなどの「電波」には限りがあり、国の割り当てにより、認められる公的な性格を与えられたビジネスです。

 ならば「街角」から広告を排除することは、私益のためであり、電波を割り当てられる資格などない・・・のですが、夏休みになると民放各局は

「自社イベント」

 の宣伝ばかりで、私益の拡充に余念がないので、いっそ、公平に放送免許は毎年抽選で、半数は入れ替えるようにすればよいと考えます。

 それでは放送ができない? バカをいっちゃいけません。民放の大半の番組は、下請けの制作会社がつくっているので、テレビ局など免許をもって「電波に乗せる装置」を持っているだけといっても過言ではないのです。

 いっそ、こんな割り当てはどうでしょう。

 放送法を改定して、免許の割り当ては1年交替とします。特に関東では民放がキー局だけで5局あり、ついでに教育テレビ(現Eテレ)も、その目的ならケーブルテレビか衛星放送、なにより「NHK 総合」で、民放バリのバラエティやAKBの番宣番組を流すぐらいですから、教育テレビと統合させ6局分の電波を対象とします。

 その上で視聴率の上位3局を「メジャー」として免許が更新させ、残りのうち2局は名乗り出た企業による「完全抽選」で決定し、最後1枠は「ネット総選挙」で選抜します。

 ネット世論とリアル世論の乖離が激しいのは、互いに安全圏から他社を揶揄している現状だからで、ネットが望むテレビ、仮にそれは「ニコ動」かもしれませんが、それで「視聴率」がとれなければ、ネットの住民に現実を突きつけることになり、反対の結果になれば既得権益に甘んじている「テレビマン」の怠惰を白日の下にさらすことができます。

 そして「新規参入」が繰り返されることで新陳代謝がすすみ活性化されることでしょう。

 さらに「電波に乗せる装置」をはじめ、各種機材の貸し出しを既存放送局、とりわけ「選に漏れた」企業に義務づければ、なにも問題は起こりません。

 思わず力を込めて脱線するほど、最近のテレビはつまらなくなりました。

 話を個人情報に戻します。

 街角を歩く人の顔にモザイクをかけるのも、個人情報過剰保護の弊害です。街角という公の空間にでてきて、公共性が認められたテレビ電波のカメラに捉えられたら「個人の権利」は制限されるものです。

 ところ、すでに「私益の拡大」に放送電波を利用している民放各局には、思い当たる節があるようで、今日も明日も通行人にモザイクをかけ、珍妙な「街角」が世界中に配信されています。クールジャパンではなくクレイジージャパンです。

 原点に帰れば、個人情報保護法とは、住民基本台帳ネットワークの整備に伴う

「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案」

 から派生し、本来は「お上」を監視するもので、当時の背景を大雑把に説明すれば、昨年末の「特定秘密保護法」と同じような、官による情報統制を怖れる声も少なくなかったのです。

 例えば警察組織が他省庁の集めた「個人情報」を流用することが、プライバシーの侵害になり、引いては戦中の特高のようになり、言論統制・思想統制に繋がり、軍靴の音が響くと批判されていました。

 そこに社保庁のイメージキャラクターに選ばれた某女優の「年金未納」や、他の閣僚の未納が、役人によってリークされたことにより、拡大解釈されて施行された経緯があります。時系列に並べて振り返ると、役人の意のままにマスコミと左翼が振り回されているような気がしてなりません。

 今回のベネッセの事件で、明らかとなった個人情報保護法の問題は「名簿屋」の存在です。もともとは住民基本台帳を手書きで写し書きして・・・とは一つの方法に過ぎません。情報収集できる確実性はありますが、価値ある情報は得られないのは、施行前からの常識です。

 個人情報保護法施行以前、もっとも価値のある名簿を入手する方法は、それぞれの業界からの横流しで、名簿屋のビジネスは当時からグレーゾーンだったのです。と、いうより、倫理的にはアウトでしたが、取り締まる法律がなかったのです。

 高校に入学したてのいまから四半世紀とちょっと前。入学直後に実施された学力テストの結果をもとに、頑張れば六大学も夢ではないという塾の売り込みの電話がありました。なんでも学力テストの結果が、学年で100位以内にはいっていたというのです。

 1学年300人の100位以内は微妙な数字ではありますが、断ったのはそれが理由ではありません。貧乏です。

 蒸発した母の残した借金を返すために身を粉にし働く父に、高校に通いながら家庭を支えるひとつ上の姉をみていれば、大学進学を考える余裕などなく、なによりも誰よりも早く金を稼いで独り立ちしたいという15才の私の背中には、浜田省吾の「マネー」がなんども繰り返し流れていました。

 都立高校の教室で、授業時間に受けた試験結果が、塾の業者に流出していたと言うことです。当時は珍しいことではありません。

 こんなこともありました。就職活動が遅くなったのは、バイト先にコックとして就職する予定があったからです。卒業後はチーフ待遇という約束もありました。

 末期ガンの病床にあった父は寂しそうに「ネクタイを締める仕事に就いて欲しかった」とぼそっとこぼしました。波瀾万丈の人生を過ごした我が身を振り返ってのことでしょう。半袖短パンで原稿を書く我が身を、いま振り返るのはやめておきます。

 高校卒業を間近に控えてからの就職活動でしたが、幸いにもバブル景気です。バカでも何とかでも、名前さえ書ければ就職できる時代、面接を受けたのは「永代信用組合」。

 面接をパスし、次は「筆記試験」です。外面の良さは抜群で、生徒会長という肩書きをフル活用したこともあり、手応えは充分でした。

 筆記試験の当日は雨でした。真冬の寒い雨です。通用口で要件を告げると、しばらく待たされた上で、面接を担当した社員がバツ悪そうにでてきて、交通費だと袋に入った千円を渡し、試験がなくなったと追い返します。

 目線を合わせようとしない彼の表情から悟ったのは母のことです。蒸発した母はサラ金のブラックリストに載っており、父の名義でも借り入れしていたことから、ブラックリストに載っている夫婦の息子を受け入れる金融機関はないでしょう。

 いずれ帰ってきたときと、籍を抜かなかった父の采配が裏目にでたのでしょう。もちろん、本人である私には関係のない「個人情報」ですが、蛙の子はカエル。企業防衛からみれば妥当な判断です。

 ちなみに企業名をだしたのは、12年前に破綻しているから。
 ニュースに触れたのは、独立して2年目。小さくガッツポーズをし、あの時、試験さえも受けさせてくれなかったことに感謝したものです。「見かえしてやる」と心に刻んでいたからです。

 さらにリアルに身を粉にしたためか、平成元年に父は他界しました。葬儀には消費税がかかり、「消費」の文字が笑えない冗談に見えたものです。それからしばらくもせず、墓の売り込みや香典返しのパンフレットがDMで送られてきましたし、何度も電話が鳴ったものです。

 後に事情通から聞いた話では、テストについては業者か教師、葬儀に関しては葬儀社か斎場(焼き場)の職員が横流しをするのが、習わしのようになっていたといいます。ちなみに母の借金、そして滞納によるブラックリストの話しは、小学校4年生頃には知っていました。年がら年中、そんな会話が飛び交う環境だったので。

 とある葬儀社から直接聞いた話によると、出入りしている病院の関係者から、死にそうな患者の情報がはいることもあるといいます。

 まさに「故人情報」です。

 ではこうした「情報漏洩」はすべて処罰されるべきでしょうか。

 現在はルール違反になっているので、法治国家においてはアウトですが、DMや売り込みといった宣伝・広報活動とは、求めている人にとって「売り込み」は、ウィキペディアレベルに役立つ有益な情報です。

 結局、親不孝なわたしは、父が眠る墓を建てるまで13回忌直前までかかってしまうのですが、「故人情報」をもとにした売り込み広告から「墓」の基本情報を入手したものです。

 広告とは、各社が知恵を絞り、利点をアピールする媒体なので、何社かつき合わせてみると、どこでも掲載されている「基本情報」と、オリジナルネタの「セールスポイント」がわかるのです。

 いまどきなら、ネットで検索があると反論されそうですが、ネットで検索できるのはボキャブラリーの範囲に過ぎません。未知の世界は不得手です。

 ならばSNSの教えあう文化が役立つと主張するかもしれませんが、SNSは同一価値、似たような能力の人間が集う傾向にあり、レベルの違いは埋めようがありません。

 ここでWebの「6次の隔たり」を持ち出す人もいるでしょう。これは6人ほど辿れば、世界中の誰とでも接点を持つという、いわば

「友だちの輪」

 ですが、理想論に過ぎません。

 本当に実現するには、他人の迷惑を顧みない強引さが必要で、その強引さを、世界中の誰もが持っているとは幻想です。

 例えば私は、たったひとりを介せば、

「セガサミーホールディングス 代表取締役会長兼社長 里見 治」

 につながることができますし、かつて私がデザインし、印刷した成果物が里見氏の手に渡ったこともあります。

 しかし、面識もなければ、先方にメリットもなく、こちらに用事もないので、友だちの輪を広げることなどしません。妻の命がかかっているとでもいうのなら、話は別ですが、6次の隔たりとは、理屈ではあっても、リアルにおいて実現するには相当自分勝手な発想だということです。

 その点、広告は便利です。向こうから勝手に押しつけてきます。押し売りの中には必ず情報が含まれます。

 ところがこれが規制されたことにより、情報との接点が不足しているのが現代社会です。かつては、個人情報をもとに最適化された情報が提供されていた、とも言えるのです。

 個人情報の利用が制限されたことにより、マス広告を打てる、大資本の大企業が有利になり、ますますこの国は多様性を失っています。一方向に流れる全体主義に傾斜する理由のひとつと見ています。

 また、ベネッセの流出した情報で言えば、

「たかが住所氏名に電話番号、生年月日ぐらい」

 で大騒ぎするほうが「カモ」にされます。この理由に触れる前に、DMや売り込みが有用である証拠を紹介します。

 ネクシィーズ、ヒト・コミュニケーションズ。これらは上場しているテレマーケティング、有り体に言えば「電話売り込み」の代行業です。

 その他にも周辺を含めれば、名だたる企業が参入しているのがテレマーケティング業界です。金持ちは皆悪人という、日教組史観でもないかぎり、違法性は薄いというより、個別事例は脇に置いても方法論としては合法で、社会的意義もあるから存在が認められているということです。

 いささか、もっとまわった表現になったのは、自宅兼事務所で仕事をしていることから、テレマーケティングへの「苛つき」が累積されているからです。

 一昨日の「海の日」も、夜8時に電話が鳴り、最近、私用は携帯電話かメールなので、何事かと思って受話器を取ると

「第一商品です。金を買いませんか(意訳)」

 ここも上場企業です。

 さて、ベネッセから流出したのは「たかが」レベルの個人情報です。それを証明するのが「買い取り価格」です。報道によれば容疑者が手にした金銭は250万円。

 本稿執筆時点の最新情報で流出した個人情報は2260万件となっています。すると1件当たり11銭です。100円玉1枚で909人分の個人情報を購入していたということです。

 個人情報の価格は、入手元も含めた情報の質が価格を決定します。
薄毛や下半身関係、ダイエットといった「個人的な情報」ほど高くなります。

 今回の流出名簿は一部が学習塾などに流れていたようですが、仮に「成績」や「志望校」、さらには「親の年収」といった情報が紐づけられていれば、名簿の価格は爆騰したことでしょう。

 しかし、そうではありません。むしろ、いまの段階で大袈裟に不安を煽るほうが詐欺師を喜ばせてしまうのです。

 先週発売(2014年7月24日号)の週刊文春では、本件について詐欺師漫画『クロサギ』の原作者 夏原武氏が詐欺への懸念を語ります。

 例えばベネッセの会員であったことを「教育熱心」とみれば、ほとぼりが冷めた頃に『いま以上に上質な教育が受けられる』といった詐欺が舞い込むといった具合にです。あり得る話しではあります。

 ただし可能性を論じ始めたら、詐欺師を利するだけです。詐欺師とは世間のイメージを効率よく利用する犯罪者で、東日本大震災など大災害が起こるたびに新しい詐欺が生み出されます。

 これが「たかが」と括った理由です。今回の流出した名簿は、それ単体では11銭の価値しかない情報で、週刊文春で夏原武氏が指摘するように、他の情報とすりあわせ、関連づけることにより付加価値(利用価値)は生まれますが、それはベネッセからの情報だけでは実現不可能です。

 一方、ベネッセにより重大情報が漏れたかのように怯える母親が、顔出しでテレビの取材にコメントを寄せます。「顔」は超個人情報です。

 そして怯えるママに詐欺師はこう手をさしのべます。

「ベネッセの個人情報を回収しますよ」

 もちろん、タダではありません。しかし、「可能性」の話しを膨らませ、発生していない被害を想定し、起こる確率の低い、いまなら岡山の小学生女児の誘拐事件を織り交ぜながら不安を煽り、金品を要求するのが詐欺師の手口です。

 実はこれ、既に先週末に緊急性が高いと「みやわきぶろぐ」で指摘していたのですが、一部ではすでに現実になりつつあります。ご注意ください。

 報道が不安を煽れば煽るほど、詐欺師は仕事がしやすくなるということです。

 こうした詐欺師からの電話がかかってきたときの、基本的な対策を公開することこそ、公の報道機関、特にテレビに求められる役割なのですが、恐怖を煽った方が、視聴者はチャンネルを替えないので、ここでもテレビ局は私益に走ります。

 まず、ベネッセにより個人情報が漏れたかどうかの確認をする電話の大半は詐欺師です。カモリストを作っているということです。そしてベネッセや警察を名乗れば「嘘」で、罪に問われる可能性が高まりますが、詐欺師は別の、例えば

「個人情報保護管理センター」
※個人情報保護センターは(財)放送セキュリティセンターにあります。

 といった架空の団体を名乗ってくることでしょう。模範的な対応は「回答しない」です。

 なぜなら流出を確認するなら、そもそもの名簿と、流出先と思われる名簿をつき合わせれば済むだけのことだからです。わざわざ電話を掛けて確認する必要はありません。

 また、ベネッセの流出名簿を元に、個人情報の回収を呼びかける電話があれば、こう回答します。

「あぁ、あれ、電話以外は嘘情報ですから」

 そして受話器を置いてください。いちいち答えては、こちらの嘘がばれてしまいます。詐欺師を相手にしたとき、対応する誠意は相手に隙を与えることになります。

 社会正義に燃えるなら、こうしてください。

「是非、お願いします! つきましては連絡先を教えてください」

 聞き出した連絡先をもって地元の警察署に駆け込めば、そこから先は警察の仕事です。大胆な詐欺師になれば、直接訪問するかもしれませんが、そのときは迷わず110番。

 ドアは開けずに応対してください。プロの犯罪者は必要以上のリスクを背負いませんが、素人は逆上することがあるので、自分の身体の安全確保は絶対条件です。

 こうした心配をしなければならないのはベネッセが情報流出させたから・・・とは、蓋然的にはそのとおり。でも流出させたのは派遣社員。そして個人情報を提供した以上、万が一より遙かに高い確率で、情報流出は起きるもの。それが現代社会の現実なのです。

 どれだけ安全運転をしていても、危険を避けてガードレールのある歩道を歩いていても、脱法ドラック(危険ドラッグ)を吸ったドライバーが運転を誤れば被害にあうように、人が多く集まる場所には相応のリスクが存在し、現代社会においては「人の多く集まるサイト」にも同じ危険があるということです。

 そして残念ながら詐欺もなくなりません。ならば個人情報についても、今回のベネッセぐらいなら「たかが」といえるリテラシーを身につけなければならないのです。

 クレジットカード情報や、ログインID・パスワードが流出したわけではありません。そして過剰な恐れは詐欺師を利するだけです。

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