アベノミクスに「第4の矢」

 これを我が慧眼と誇れないのは、メディアの劣化だと知っているからです。

 平成26年8月25日(月)の日経新聞の朝刊、それも1面で情報操作を見つけます。嘘は大胆な方がばれにくいとは、詐欺師における定説ですが、日経新聞と、それを書かせた財務省は詐欺師なのでしょう。

“消費増税「予定通りに」3割(大)”

 その隣にはさらにこう。

“10%引き上げ(小) 内閣支持率横ばい(中)”

 「本社世論調査」と題する記事で、括弧内が文字の大きさと太さを意味します。

 しかし、意味として繋がるのは(大)と(小)。(中)の内閣支持率は別の調査結果。並べて表記するのは不適当。

 つまり「10%に引き上げても内閣支持率は変わりませんよ」と読者に錯覚させるための「配置」です。

 読者が勝手に錯覚したのなら、それは朝日新聞のように誤報と呼ばれることも捏造がばれることもありません。とでもいうのでしょうか。うす汚い発想です。

 大中小をセットとしたとき、さらなる消費増税への国民の理解があるかのように錯覚しますが、正しく「世論(せろん)」を伝える新聞であるなら見出しはこうなるはずです。

“消費増税10%に63%が反対”

 世論はダブルスコアで「反対」しているのに、見出しになったのは「賛成」です。日経新聞に限ったことではありませんが、新聞など報道機関は国民を馬鹿だと思っています。

 増税前、税率1%とは2.7兆円だと財務省の試算とやらを使っていました。本稿では繰り返し指摘しましたが、平成元年の消費税導入、5%への増税後も、平均すると1%あたりは2.5兆円で、すると5%から8%、そして10%へと増税した際に目論む収入増も違ってきて、それは中期目標である財政再建にも影響します。

 0.2兆円とは2000億円です。それの5%となれば1兆円の誤差です。どんぶり勘定と呼べるレベルではありませんが、これを指摘するメディアは皆無でした。

 税率と税収の現状分析も正しくできない連中に、財政再建などできるわけがありません。

 例えばサラリーマンが8%のベースアップを会社側から提示されたとします。一般的に手取額の8%アップを意味するものではありません。基本給の上昇で、所得全体をみたとき、諸手当の割合が高ければ、ベースアップ率は少なくなります。

 ベースアップ8%を手取額の増加と喜ぶ社員がいても構いませんが、彼や彼女らに経理や経営の舵取りを任せられません。

 実際の税収における1%は2.5兆円で、推計値が2.7兆円とは8%の上乗せで、誤差と呼ぶには乖離が甚だしく、いうなれば現在の消費税率において、課税と非課税(免税)の差ほどの開きがある数字を発表していたのが財務省で、垂れ流していたのがメディアです。

 もちろん、新聞は事実を元に報じなければならず、財務省の試算という事実に縛られるという反論があるかも知れませんが、その財務省発表の消費税収を、税率で割り算すれば算出できる「事実」に触れないのは記者の思考停止か、読者はバカだからわからないとタカを括っているのです。

 財務省による圧力があるとしても、記事の欄外でも「財務省試算」と一筆いれる矜持すらないのでしょう。

 そして予想通り、景気が急速に悪化してきています。4〜6月期のGDPは、前期比年率で6.8%減少し、東日本大震災の6.9%に次ぐ落ち込みです。

 5月の新設住宅着工戸数は前年同月比15%減で、約4年半ぶりの落ち込みようです。

 7月の全国百貨店売上高は、既存店ベースで前年同月比2.5%減。消費増税の4月以降、4カ月連続で前年実績を下回っています。

 マクロ経済学においての基本で、「租税乗数」と呼ばれるものです。ざっくりといえば、みんなが少しずつ買い控えをすれば、消費全体が落ち込むということです。いわば「雪だるま式」に全体の買い控え額が増えるということです。

 数々の経済指標が「悪化」を示している中、政府や財務省はさらなる増税を「既定路線」としてすすめています。

 増税を推進する日経新聞と、その背後にいる財務省の主張するところの「増税をしないと日本が破綻する論」を否定しておきます。

 日本の財政状況を楽観視はしていません。財政再建は不可欠です。そのためには収入を増やして、支出を減らすことしか方法はありません・・・というのは一般家庭の話し。

 国家と個人を混同させるレトリックです。

 実現可能性を脇におけば「徳政令」だって「預金封鎖」だってできるのが「国家」で、語弊を怖れずに言えば、いつでも「ならずもの」に変貌できるのが国家です。

 個人が隣の家の財布から金を盗めば犯罪ですが、個人資産を没収する法律を作れば、合法的に強盗ができます。

 そして実際のところ、ならずものよりはライトな「クズ」ではあります。財政再建を叫びながら、民主党が政権を取ってからこの方、自民党に政権復帰をしても

「支出が増えている」

 のですから。国家を性善説でみた小市民として扱い危機を煽りつつ、他方で無駄遣いをやめません。

 個人と混同させるレトリックで語るなら、給料が増えていないなかで、消費を増やしているのです。来年度の一般会計は、概算要求ながら

「100兆円」

 を突破する勢いです。

 個人において借金を減らすために、まずすべきことは支出の抑制です。家賃の安い小さな家に引越、持ち家ならばローンの返済額を見直し、どちらの場合でも、光熱費を節約し、食費を削ることから始めますが、クズの政府と官僚は支出を減らしてはいません。

 それを言下に否定するものではありません。なぜなら国家と個人は別ものだからです。むしろデフレ脱却のための財政出動は、適切になされるなら富みに繋がるからです。

 むしろ営利企業に近いでしょうか。例え赤字が拡大するとしても、必要な仕入れや設備投資が必要な状況があるからです。そしてその借り入れに発行するのが建設国債で、企業なら社債です。

 そもそも国の借金といいますが、それは正しい認識でしょうか。

 これを今月号の『WiLL』で三橋貴明氏が指摘しているので引用します。

“正しい意味における「日本国の借金」は我が国の対外負債だが、2013年末時点で5百兆円ある。もっとも我が国は対外資産が8百20兆円に達している。我が国は3百20兆円の対外純資産状態にあるのだ
月刊WiLL2014年10月号「反撃の経済学」より”

 要するに500兆円借りていますが、貸し付けなどで820兆円の財産があるということです。

 一方で国の借金が1千兆円を越えたと言われていますが、これなど投資をしている立場からみれば論外です。

 この借金とは「国債」を指します。国債とは金融商品です。購入者は「利息」を受けとる代わりに、最悪は「破綻」のリスクを負います。

 つまり、借金というよりは「投資」や「出資」です。

 倒産した企業の株主は、出資したお金がなくなっても文句が言えません。いや、経営者に文句はいっても、そのリスクに応じた配当を得ていたわけですし、投資はなにより自己責任です。

 経済学以前の話しですが、リスクの大きな会社、すなわち、金を返しそうにない会社に金を貸すバカはいません。そこでリスクの大きな会社は、儲けからの分配金額、つまり旨味を増やすことで投資を呼び込みます。

 信用のある会社なら100万円に対して、5千円の配当でも投資を集めることは可能です。それは確実に利益が出るからで、1億円なら50万円、100億円なら5千万円を、比較的に安全にゲットできます。

 信用がなければそうはいきません。同条件なら誰もお金を貸してくれません。そこで配当を11万円に上げ、投資を呼び込みます。

 どちらの場合も、投資家は自己責任で投資先を選択します。強制されてのことではありません。

 そしていわゆる日本において報道される「借金」とは、この国債のことで、日本国が倒産すれば返済する必要がなくなります(語弊はありますが)。

 中途半端な数字を出したのには理由があります。日本の10年もの国債の利回りは0.512%(2014年8月26日午前11時、以下、近似値)。つまり100万円で5千円です。11%とはブラジル10年もの利回りで11.61%。

 利回りとは各国の「貸し倒れリスク」で、主要国の中で日本の利回りがもっとも低く、次ぐのがドイツの0.953%で日本の倍です。フランスは1.320%、米国に至っては2.389%と、日本の4倍強の金利を支払わなければ、米国の国債を投資家は買ってくれないのです。

 世界中の投資家はバカなのでしょうか。そんなことはありません。つまり、日本のいわゆる「借金」は健全の内側にあると判断しているということです。

 これは厳然たる事実です。

 財政再建が必要ないというのではありません。しかし、増税により明らかに冷え込んでいる消費を、さらに冷え込ませる増税をしてまで、急ぐ必然性に乏しいと言うことです。

 アベノミクスに「第4の矢」があるとしたら、消費増税の先送りです。もともと「景気条項」があったのですから、これを活用しなければならないのは自明。スタグフレーションも噂されているのですから。

 財務省の陰謀論まで展開すれば長くなるのでやめておきますが、事実を積み上げる報道機関の大半が、財務省の嘘を指摘しない現状こそ「国民の知る権利」を奪っています。

 そして最悪の場合、財政再建どころか、失われた20年どころか、

「日本経済そのもの」

 が失われます。

ブログ村に参加してみました。宜しければ右バナーをクリックしてください→ にほんブログ村 政治ブログ メディア・ジャーナリズムへ
にほんブログ村

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください