白鵬「ねこだまし」騒動の本質

横綱白鵬が奇策「ねこだまし」を使い、栃煌山を退けた取り組みについて、「ルールに違反と明記されていない以上、何をやっても良い」と、要約すればこう指摘したのが、テレビ朝日「モーニングショー」における玉川徹テレビ朝日社員。なるほど人間性が見えますが、しかし、世界のスポーツにおける本音はコチラ。

スポーツ競技とは、能力で相手を上回るか、相手のミスを引き出すか、ルールの隙間をつくなどしても、「勝てば正義」の世界です。ただし、それでは「性善説」をもとに制定されるルールが形骸化するので、思っていてもクチすることはスポーツマンシップに反します。

「スポーツマン」と書いて「卑怯者」とルビを振りたくなる選手が登場するのはそこに本質のひとつがあるからです。

玉川徹氏は、面白い質問をします。詳しくないのですがと断った上で、専門家に「相撲はスポーツなのか、格闘技なのか、それとも神事なのか」と訊ねます。専門家が
「すべて」と答えると、ぼんやりとしていると嘲笑します。

質問がそもそも間違っています。だから答えも間違っています。正しくは「興行」です。

スポーツや格闘技の要素を織り交ぜ、神事というバックストーリーを重ねた「興行」で、プロレスなどと同じです。それは八百長騒動のとき、責任の所在と真実が曖昧なまま幕引きされたことで確定した事実です。

プロレスラーが「真剣」にプロレスに取り組み、戦っているように、相撲レスラーも同じくで、ただし、プロボクシングや総合格闘技のように、相手を「倒す(=ダメージを与える)」ことを目指すものでは無いということ。

特に相撲は足の裏以外が土俵につくか、その「土俵」からでれば決着がつき、がっぷり四つに組んでの取り組みなら、怪我することも滅多にありません。

神話を由来とし、神事との接点もありますが、ラジオ中継がはじまれば「制限時間」がうみだし、テレビへの移行で「四神」を意味した四隅の柱を切り落とし、決着をスッキリさせるために「ビデオ判定」をいち早く導入するなど、「興行」を大切にしてきた歴史を持つのが大相撲です。

神事だ、国技だと崇めるから、白鵬の「ねこだまし」が分からなくなるのです。

平成に入ってからの「ねこだまし」といえば「舞の海」の代名詞となっていましたが、小兵力士が知恵を絞って勝利をもぎ取った取り組みだから称賛されました。対する白鵬は記録からは大横綱といっても過言ではないでしょう。また、現役力士の中では頭10個分ぐらい心技体の揃った力士もいません。なお、この「心」は、勝負への心構えで、品格や精神性を意味しません。

つまり、名実共に最高位の横綱が「ねこだまし」をしたから騒動になったのですが、先の「モーニングショー」では、また設問が間違っていました。

“白鵬のねこだまし、問題と思いますか?”

問題とは齟齬のあること、ルール違反をイメージしますが、ルール違反はしていません。いうならば「モラル違反」ですが、明文化はされていませんし、負ければ負けたでとやかく言われる角界で横綱。勝てば官軍という意見がでるのは当然でしょう。余談ながら、日本史をひけば、「勝ち馬に乗る」ことは珍しくなく、負け戦に義を通した真田幸村が英雄視され語り継がれたのは、それだけ珍しい出来事だったからです。忠臣蔵などもね。

それでは白鵬の「ねこだまし」。一般視聴者に、その行為の是非を問うならこちらが正解。

“白鵬の「ねこだまし」、あなたは好きですか、嫌いですか”

大切なことなので繰り返します。大相撲は「興行」です。いくら白鵬がうそぶき、己を正当化しようと「嫌い」が上回れば、商売になりませんし、ねこだましを「好き」という大相撲ファンが多数を占めるのなら、時代が変わったということです。潔く取り入れることが、興行収入のアップに繋がることでしょう。

しかし、人種に理由を求めはしませんが、勇壮な騎馬民族であるモンゴル人の文化からして、トップに登り詰め、そこに君臨し続けるなら、日本人的価値観における「横暴」「傲慢」になるのはある程度仕方がないのではと考えます。部族長が絶対的に支配し、かつ一族の責任をもつ姿は、八百長問題や朝青龍問題で揺れた角界を背負ってきたと自負する白鵬そのもので、あの時、責任をうやむやにした理事会に、思うところがあっても不思議ではないかと。

そしてそれでも日本相撲協会が「横綱の品格」を語るなら、本来の姿に戻すこと。それは興行における番付の最高位は「大関」までとするのです。そして現役引退後、成績だけではなく、その人格を評価しての名誉として「横綱」を贈るという方法。ま、「横綱襲名」は興行として「美味しい」ので、改めることはないでしょうが。

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