危険とあおる事故報道。ドライバーの義務に触れない不可解さ

 大阪で、のぼりを立てるのに使われる「土台」が、車道に放置され事故が発生。運転していた19才の大学生と、同乗者が怪我をしました。警察は「殺人」の容疑で捜査を開始し、テレビ朝日「モーニングショー(前モーニングバード)」は、現地に飛んで詳細を報じます。

 路上への物体の放置は危険で言語道断というのは大前提ながら、随所におかしなところが。

 まず「土台」とは、小さなドラム缶に支柱を立て、コンクリートで固めたものですが、女性レポーターは「50キロはある」と報じ、支柱部分を持ち上げてみせ、私ではびくともせず、男性スタッフでもわずかしか動かないと伝えますが、50キロもあれば、動かしたスタッフが怪力。

 後にスタジオからは「35キロ」と補足していましたが、沿道の飲食店のものらしく、「どうやって路上に移動させたのか」と不思議がるためでしょうが、ドラム缶は直径30〜40cmほどで、支柱の高さは1mほど。ならば支柱を左右にすれば、テコの原理で簡単に転がるはず。「動かない」とは過剰演出。

 警察が「殺人」と発表したのは一罰百戒、模倣犯の防止で、犯人が捕まるまで本当の動機は分かりませんが、パイロン(カラーコーン)的なものを路上に放り投げる行為は、褒められたものではありませんが、酔っ払い業界では珍しくありません。

 さらに、カースタントのプロに、男性レポーターが同乗して、事件を再現して見せますが、そこに用意した「土台」は、あきらかに事件のものより小さく、私有地での撮影ということですが、こちらに街頭はありません。

 急ブレーキで止まってみせ、やっぱり危ないと煽りますが、街頭の有無は障害物の視認性に大きく影響するのでフェアな検証ではありません。

 繰り返しになりますが、路上に放置した犯人が悪いとはいえ、自動車は走る凶器です。

 大学生は30〜40キロで走行していたといい、事故現場の状況から見ても過度な速度超過はなさそうですが、いくら夜間でも30cm×1mほどの物体、しかも「黄色」のカラーリングを施されている「土台」を、ドライバーが見落とした可能性については一切触れていません。

 この「土台」の大きさは、小柄な男性が酔っぱらって寝込んだときの大きさぐらいで、忘年会シーズン、そんな「落とし物」を見かけることは、さほど珍しくありません。

 視認性の悪い夜間の運転は慎重にならなければなりません。そして車道に障害物がないに越したことはありませんが、ドライバーには「安全運転義務」が課せられております。これは道交法を守れば良いということではありません。

“安全運転義務は、千差万別な道路状況・交通状況において、自転車を含めすべての車両の運転者に対し、包括的に安全に関する注意義務を課すものである。
運転に際しては、道路交通法に定められた通行方法に従うなどのほか、常に安全を確保するよう注意を払わなければならない。”

 とあります。

 ならば「障害物があるかも知れない」「酔っ払いが寝ているかも知れない」と、注意しながら運転するぐらいがベストで、被害者と紹介された大学生は、怪我をしておりご愁傷様ですが、しかし、「気づかなかった」とは、多くの痛ましい交通事故の加害者の弁です。

 自動車免許取得から27年が過ぎ、4枚目のゴールドライセンスの保持者として、釈然としない事故報道です。

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