クックパッドに見つける創業者の妄執

 創業者と経営陣の対立と言えば「大塚家具」が世間を騒がせましたが、IT業界でも騒動勃発。クックパッドです。

 クックパッドとは「レシピ投稿サイト」として脚光を浴び、確たる人気を得たのは、「もやし」「アボカド」といった素材からレシピを検索できる機能です。

 これにより、冷蔵庫の残り物を活用できるとクチコミがクチコミを呼び、あれよとマザーズ上場を果たし、これまたすぐに東証一部上場企業へと相成りました。

 そのクックパッドでお家騒動。

 創業者で株式のほぼ半分を保有する佐野陽光氏が、レシピ以外の分野へ多面展開をする現経営陣を不満とし、現経営陣の退陣と、自身も含めた新役員への刷新を求めたので株価は大暴落。

 昨年末は2500円前後だった株価は、年明けの世界同時株安にも踏ん張り、2000円台をキープしていながら、創業者の提案によりストップ安。

 黒田マイナスビーム(マイナス金利導入)で持ち直しの兆しを見せる、日経平均株価の中、出遅れ感は否めません。

 株式格言には「落ちるナイフはつかまない」というのがあり、まだ底値を付ける可能性が株主総会まであります。

 推測するに「逆家入一真状態」と見ています。

 というのも、創業者は経営を預けた現社長に

「料理以外に手を出している」

 と苦言を呈しているにも関わらず、マザーズ上場のカヤックの創業者 柳澤大輔氏を役員に迎え入れようとしているのです。

 このカヤック、上場前からマスコミ露出のやたら多い企業で、かつての楽天市場、「エッジ」時代の「ライブドア」を彷彿としたこともあり、上場する遙か以前の話しですが、売上高を従業員数で割た売り上げの低さに呆れた記憶があります。

 さらに「Pixiv事件」も起こしています。

 「Pixiv事件」とは、イラスト投稿サイト「Pixiv」で、絵の上手い素人を青田買いしてゲームを作れば安く作れる。という創作者へのリスペクトがなければ、才能を搾取する手口を、先のカヤック 柳澤大輔氏が、日経新聞の連載において、社名入りで暴露し炎上した騒動です。

 早くから日経新聞と手を組んでいる当たりに、胡散臭さを見つけるのは、創業者が不正に手を染めていた足立区に登記上の本社がある太陽光仲介ビジネス「エナリス」で、水素自動車が買えるほどの損失を被ったからかもしれません。

 エナリスを日経新聞は礼賛し、NHKがそのビジネスモデルを紹介した直後に、不正疑惑が確定的となりましたが余談。

 現経営者とは先の佐野陽光氏がスカウトしてきた、元カカクコムの穐田誉輝(あきた よしてる)氏。クックパッドに通じるのは、どちらもコンテンツは「人任せ」。

 クックパッドはユーザーの投稿が、カカクコムは店舗の価格更新がコンテンツのキモ。相通じるものがあり、なかなか良い人選でしょう。

 株式公開をすれば、株主から更なる成長を求められるものです。しかし、料理だけで更なる上を目指すのは困難。なぜなら「楽天」などがパクっているから。

 そもそもレシピ投稿サイトなど、日本のヤフーあたりが本気になればすぐに叩きつぶされることでしょう。一般的なレシピに著作権はありません。だから、他人のレシピを、別のレシピサイトに投稿することも不可能ではなく、また「オリジナル」だとしても、その投稿者自身が「マルチポスト(複数のサイトに同じ内容を投稿すること)」すれば同じことです。

 クックパッドは有料会員とはいっても、付和雷同の一般ユーザーで、他者に無料のサービス、あるいはより安いサービスが登場すればサービスの根幹が揺らぎます。

 カカクコムが強いのは販売チャネルとして認知されたことで、出店企業からの確たる収益源があるからです。

 また、一部で「クックパッド離れ」はすでに起こっています。

 投稿者が増えるに連れ、分かりづらいレシピも多く掲載され、その結果、目的のレシピに到達する前に「脱落」すると、嘆くユーザーをツイッターで確認しています。「食べログ」でも起こっていることですが、投稿だけで一定以上の水準を守り続けることは、とても困難なのです。

 上場を果たしたネットサービスなどの提供企業は、上場で得た資金をバラマキ、当たったものを収穫する、賭けといえばそれまでですが、いわば「投資家」的な手法を採用するところが多くカカクコム穐田氏も同じようなアプローチだったのかもしれません。そして間違いではありません。

 ネット企業は一発当たるとでかいのは、設備投資などの初期投資が他業種と比較すれば皆無に等しく、当たった分だけ丸儲け。ネットサービスの要とも言える「データセンター」や「サーバ」も、既製品やレンタルで、自作するグーグルやアマゾンに勝てるどころか、そもそも勝負の次元が違うのが、日本のネット企業なのです。

 また収益源のベースとなる、サービス利用者を増やすのも「新聞」のような既存メディアと「グル」、もとい「コラボ」すれば、倍々ゲームで増やせます。

 いまどき新聞? と訊ねるなら世間知らず。新聞社は雑誌社とテレビ局を子会社にもっており、人材交流もあれば、ネタのやり取りはギブアンドテイクというより一蓮托生。

 突然、テレビでレギュラーコメンテーターを務めている、見知らぬオバサンをググってみれば、新聞社系の雑誌で前段もなく連載を持っていることなど珍しくありません。そして辿ると「縁故」の影どころか、衣をまとっていたりするのですから、メディアからダイナミズムが失われるのは当然です。

 首尾良く上場を果たせば、1億円の投資が100億円に化けることも夢ではありません。だから99社が倒産しても大丈夫。また、IT系の人材はいつも不足しており、社員の「頭数」があれば、事業売却で回収することもでき、「会員名簿」があれば以下同文。元本が高確率で保障された投資商品という見方もできます。

 だからか「上場ゴール」と噂される企業が、昨年から続出。

「上場ゴール」とは上場することだけを目的とした株式上場で、上場後の経営ビジョンが描けていない会社を指し、それが「絵空事」の企業もここに含まれます。

 これが本当なら法に触れますが、その線引きが難しいのは、かつて上場していた焼肉屋(本当は不動産屋)の社長が

「グーグルを越える世界一の企業になる」

 との大言壮語を「嘘」と否定できないからです。

 上場ゴール疑惑で、もっとも名を馳せたのが「gumi」。新興市場を経ずに東証一部に上場するも直後に赤字転落と発表し、株価はストップ安。

 その後も不祥事の連続コンボを披露して、上場後初の株主総会では怒号が飛び交い創業社長に「詐欺師」とかけ声が飛んだとか。その他に「グノシー」なんかも上場ゴールにカウントされています。

 上場ゴール(疑惑ですが)がまかり通るのは、幹事証券会社の目論見の甘さとされ、それはその通りで、疑われる企業の多くが

「野村證券」

 であることは有力な状況証拠ながら、あえて弁護するなら、先の「バラマキ」で上手く行っている「IT企業」が少ないからです。

 それが狙いかどうかは分かりませんが、クックパッドは様々な企業に出資し、「イーブックイニシアチブ」や「みんなのウェディング」といった上場子会社をもっております。

 そして「株価」を経営者の通信簿とするなら、一定の結果を出していることは「ヤフーFinance」のクックパッドの週足チャート(株価のグラフ)が教えてくれます。

 しかし、創業者でほぼ半数の株式を保有する佐野陽光氏は、これに納得しないというか、

「俺ならもっと上手くやれる」

 と思ったとするのが「逆家入一真状態」です。

 創業以外の何もしていないかのペパボ家入との逆バージョン。

 ペパボとは、創業したレンタルサーバ会社「paperboy&co」の略称で、GMOのプロデュースにより上場した、先の「バラマキ」による成功例のひとつながら、上場直後に創業者の家入一真氏は社長のイスを追われ、翌年には代表権すら解かれ、上場後の成長にはなんら寄与していない希有な人物。

 ペパボ家入氏といえば、前回の都知事選挙に「ホリエモン」をパートナーに、「インターネッ党」なる政治集団で出馬した、ネット界隈では「お騒がせボーイ」として有名。

 海外では「上場」までの人物と、その後の「経営」が分離していることはよくあることですが、家入氏の場合、都知事選挙出馬時に

「お金がない」

 とクラウドファンティングで募金を呼びかけていたことから、色んな意味で経営に向いていない人物だったのでしょう。

 いまでは社名も「GMOペパボ」となり、家入氏の残した軌跡は、ウィキペディアに残るだけです、多分。

 つまりはその逆。創業した俺様が誰よりもクックパッドを知っており、さらに上手くやれる、それがお家騒動の本質なのではないかと。そこに「個人的感情のもつれ」は不可欠でしょう。

 なぜなら、カヤックがでてくるあたりが実にウサン臭い。それは

「面白いことやっていれば成功するじゃん」

 という偶然を必然と錯覚した可能性であり、ホリエモンを挙げるまでもなく、「偶然」以外を理由に成功したIT社長は国内で探すのは困難で、日本のイーロン・マスク、ジャック・ドーシーはいまだ夢にすら現れていません。

 そのカヤックも「上場ゴール」状態。

 上場直後に高値を取ってからはなだらかな滑り台状態。チャートは長期下落を表しており、公募価格を上回っているのが唯一の救いといったレベル。

 株式投資としてはかなり「リスキー」な企業が「カヤック」で、その創業者 柳澤大輔氏をクックパッドは経営陣に迎え入れようとしています。

 おおよそ半年前に、シンポジウムで二人の創業者は同席しており、ここで唆されたのか意気投合したのか。

 とにもかくにも創業者の佐野氏は「料理」に専念しろと、現経営者の追い出しを画策しているわけで、株式の論理で言えば、ほぼ半数を保有する佐野氏の勝ちは揺るぎません。

 しかし、気になる記述を上場企業の情報がまとめられている『会社 四季報』に発見。

 カヤックの紹介にこうあるのです。

“子会社新設し、ブライダル事業に参入”

 先に触れたようにクックパッドの子会社には「みんなのウェディング」があります。競合する可能性のある企業の役員を、経営陣に迎え入れるとは。

 クックパッド佐野(創業者)が連れてきたのが

「世界の田崎」「道場六三郎」「平野レミ(笑)」

 とかなら、買い材料となるのですが。

 と、ここまでが長い前置き。

 日銀が「マイナス金利」に舵を切ったことで、銀行が楽して儲けることができなくなるのは痛快ですが、銀行に預けていて得られる金利の低下は避けられません。

 するといよいよ「貯蓄から投資へ」の流れが加速するかもしれません。いずれにせよ「国策」なので、この流れが止まることはありませんが、日本の株式市場には、東芝の不正会計を挙げるまでもなく、かなりウサン臭い会社がゴロゴロしています。

 投資は自己責任、くれぐれもご注意を。

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