小池ポチと安倍批判は合わせ鏡

 年末、拙稿の読者を名乗る初老の男性と会話をする機会がありました。彼は私に尋ねます。

「どうすればこの国は良くなるんだろうか」

 政治家の悪口をさんざっぱら語り尽くした後の、溜息にも似た質問にこう答えます。

「マスコミが変われば良くなります」

 諸悪の根源をマスコミに求めるほど短絡的ではありません。また、マスコミに日本社会を変える力がある、とはいえ、それを期待してのことではありませんし、それは我々、国民の成すべきことであり、マスコミ悪玉説という依存は「甘え」の裏表に過ぎません。

 それでも答えを「マスコミ」に求める理由を小池百合子都知事閣下に見つけます。

 はてさて、すっかりハネムーン期間も過ぎました。米国マスコミの習慣をなぞり、新大統領、新政権が誕生してからの100日間は、試運転のハネムーン期間として批判を控えるものとは、日本では後に悪夢と気がつく

「民主党政権誕生」

 のときよりマスコミが流布したものです。

 直前の麻生太郎内閣誕生時どころか、その二代前の第一次安倍政権など、生まれる前から罵詈雑言の嵐だったことと比較すれば、おぞましいまでのアンフェアぶりでしたが、マスコミの「健全化」とみれば歓迎すべきことではあります。

 それがマスコミによる恣意的な解釈に過ぎないことは、第二次安倍政権誕生直後からの大バッシングが証明するのですから、マスコミというのは学習能力すらないのでしょう。

 彼らは、とりわけ安倍政権批判に明け暮れる、朝日新聞や毎日新聞、東京新聞とその系列のテレビ、さらに講談社などの諸雑誌らは、みずからの発言は、以前の発言と矛盾していても、すべて許されるという特権意識があるのでしょう。

 仮にその意識なく、矛盾を繰り返すなら、その精神性は病理疾患レベルといえます。

 ハネムーン期間が認められるのは反自民党政権だけだと実践してみせ、それは今も変わらず、その最新事例が小池都知事です。

 形式論で言えば、小池百合子氏はいまだ「自民党員」ながら、総裁選挙で石破茂氏についたことから、安倍政権では冷遇された反主流派で、拡大解釈すれば「反安倍」。

 いたずらに対立軸を煽ることで、政権打倒へつなげる目的がアリアリと見えてきます。

 しかし、都知事就任から間もなく半年を迎えるなか、都知事がいったい何をしたのでしょうか。記者に「大山鳴動して鼠一匹」かと問われ、色をなして反論したのは、あまりにも「図星」だったことは誰の目にも明らか。

 都民のひとりとして400億円の削減に繋がったことは評価しますが、それは結果論。政治は結果責任ながら、それは行き当たりばったりとは似て非なるもの。

 新設に疑問を呈しながら、精査をしたら元の案だったということは、元の案はそもそも論で、ベストプランだった、ということ。

 既存施設の活用や、横浜などの別地域の開催をちらつかせなければ、予算削減も不可能だった。という意見もあり、それも一理あるでしょう。

 しかし、それは知事権限を用いた「恫喝」です。

 ここで断っておきますが、小池百合子都知事閣下の手法を批判しているのではありません。同様に強権を行使した石原慎太郎以下の都知事を批判したように、報じなければアンフェアであり、都民や国民に正しい判断材料を届けるマスコミの使命に反すると指摘しているのです。そして批判が、政権に緊張感を与えるのです。

 都民のための恫喝ならアリ。という考えもアリでしょう。しかし、400億円が仮に都議会のドン内田氏一人に流れるところを阻止したのなら、やんやの喝采もあげますが、それは噂のレベルでしかも規模は遙かに少額。

 建設費用その他は、民間企業に流れるべきお金で、建築土木は飲食費などへの波及が期待できるもので、これがストップされたという点においてはマイナスです。

 一方で私立高校の無償化を打ちだし、それは世帯年収910万円までと、相応の富裕層まで無償とする政策に140億円を計上するとのこと。

 五輪施設の400億円は、数年にわたるもので、また、建設後の利用ができるものでありますが、無償化は一度決まると、半永久的であるのは、民主党政権によりはじめられた高校無償化が証明します。

 仮にこれが決定されると東京五輪開催の2020年度までに140億円×3=420億円。五輪施設の予算で削った以上の都民の負担が発生します。

 さらに今朝の読売新聞朝刊(2017年1月5日)によれば、保育士への手当を支給するために、最大で1000億円の予算を計上するとあります。

 なんだよ、バラマキじゃん。

 美濃部亮吉都政以来のバラマキ復活。

 こんな言葉が踊る紙面もヘッドラインも見つかりません。

 都民ファーストは結構。福祉も良し。子育ても良し。

 でも、やっていることは、五輪組織委員会とおなじベクトルにある都政の肥大化で、どんぶり勘定レベルの政策です。

 なぜなら、目の前の子育て世帯を支援するにしても、その子供が将来において、東京都にどれだけのメリットをもたらすのか、また私立高校の無償化を実現したときの、教育水準の「向上」への取り組みに対し「費用対効果」が示されていないからです。

 さらに東京に集中するアホ大学・・・もとい、大学教育という国家プロジェクトへの接続も考えないのは、今年夏に迫った都知事選挙の集票のための「バラマキ」に過ぎません。

 芸のない話ですが、これは為政者、権力者の常套手段であり、政治力学でみれば当然の話で、繰り返しになりますが、私の批判の矛先は、同様のバラマキを実施した安倍政権は批判し、小池百合子都知事閣下に沈黙を守るマスコミに対してのものです。

 さらに都議会がもっていた、復活予算の権限を知事は取りあげました。

 これも「ドン内田(都議会自民党)」の権力を取りあげるためとマスコミは喝采を送りましたが、取りあげた権力をガッチリ握り締めたのは都知事で、それを権力の集中と呼び、口の悪い人は独裁と詰ります。

 本来的には都知事の権限だとはその通り。しかし、すべての業界団体が都知事を詣でる姿は、民主党政権時代に陳情を一手に集めた小沢一郎幹事長(当時)に重なります。

 築地市場の豊洲移転をめぐる顛末もお粗末。

 盛り土の代わりに地下空間が見つかったところまでは、

「不正を暴くジャンヌ・ダルク さすがは小池百合子!」

 てなところでしょうが、専門家の大半は妥当な工法と評価を下し、当初この問題を指摘し、マスコミの寵児となっていた建築エコノミストの森山高至氏は、いまネットでは「森山デマ」とその主張に疑問符が多数投げつけられています。

 私は建築の専門家ではありませんが、森山氏に超絶笑ったのは、謎の地下空間が見つかった際、そこへのアプローチとして、地面から斜めのトンネルを掘るという、ワンダバ(特撮作品のテーマソングのイメージ描写)な発想です。本当に専門家か? と。

 さらにベンゼンやらなにやらが検出されたときも、同様の大騒ぎがされましたが、実際的には問題の無い値で、にも関わらず、豊洲移転の延期を決め、さらに最終決定を春先以降とし、なんのことはない

「先送り」

 です。

 そして築地の業者は宙ぶらりん。

 だから、築地魚河岸仲卸三代目主人としてマスコミでも活躍する生田よしかつ氏は、もともとは移転賛成派で、小池百合子支持派だったのですが、反小池としてネット上で痛烈な批判を繰り返しています。

 生田氏にしても、積極的に築地を去りたかったわけではなく、東京都からの説明の歴史の果てに、よっしゃわかった。あんたらを信じるぜ! てな感じで受け入れた豊洲移転で、それが毒が出るとか床が抜けるとか、誰の責任かも曖昧で、地下室に斜めの穴をあけるとの見識を披瀝する「専門家」を重用するマスコミにより、不確定な情報が拡散され怒り心頭、になるのは当然のことでしょう。

 私の小池百合子評は道半ば。

 ポピュリストの匂いがするのは機をみるに敏だから。橋下徹氏を政治塾の講師に依頼するところに見える馬脚から、現時点では「使いよう」という見立て。

 正しく批判すれば、軌道修正という名の変節すらもひらりとできる人物ではないかと。ある意味、優秀な政治屋ということです。

 ただし、このままで「落としどころ」がない。逆の意味での「褒め殺し」になるのではないかとの危惧もあります。

 それもこれも、マスコミの怠慢ではなく思惑によるところが、この国をミスリードしています。本件は都政ですが、構造は同じです。

 靖国参拝にせよ、特定秘密保護法にせよ、安保法制にせよ、TPPに各種国政選挙に、普天間移設を巡る騒動においても、反安倍陣営の見事なまでに積み重ねた屍どもが、ようやく見つけた希望の光が小池百合子都知事閣下。

 しかも、反安倍の旗頭となるはずだった蓮舫は、二重国籍の説明をいまだに充分に果たすことなく、仮にこの段階で称揚し、後に重大な疑惑がでてくれば一蓮托生。

 二重国籍の疑惑報道を控えるという形で支援したマスコミとしても、隠し事が明らかにされない以上、つき合いきれないというのが本音であり、あわよくば小池百合子都知事と連携することで、こうした負の事実をうやむやにしたい、その為にも小池批判を意識的に避けているのでしょう。

 いわば、反安倍への代理戦争の、さらには代理人としての都知事への期待が、マスコミがもつべき批判精神の刃を鞘に収めさせ、その姿は反安倍マスコミが、政権への同調者を、というより批判しない有識者を口汚く罵る「(忠犬)ポチ」と同じです。

 つまりは小池ポチ(反安倍マスコミ)。

 正しい批判すらできず、蓮舫における二重国籍の説明のように、詭弁に詭弁を重ね、前言を上書きする。小池都知事を巡る一連の擁護報道とは、安倍政権批判の合わせ鏡で、マスコミの劣化をアリアリと映しだしています。

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